蒼夏の螺旋 “できるかな?”

 


あちこちでツツジの開花を追い抜け追い越せと、
アジサイがその花の瓊
(たま)
優しい紫や鮮やかな赤に染めつつある六月の初旬。

 「いよいよの開幕だっ!」

スポーツ大好きな奥方が、
冬の五輪と同じほど待ちに待ってたイベントがやって来た。
世界中のファンが熱狂しつつ、その目を離せぬ、
4年に一度のもはや“祭典”。

 「ワールドカップ、か。」
 「そーだっ。」

どーだ参ったかと、
何でそうも彼が威張るのかが判らないほどに、
テンションが上がりまくりのルフィさんであり。
やわらかそうな小鼻をふくらまし気味になって、

 「またまた時差のある国での開催だもんな。
  何かサ、そういうのもまた、
  お祭りっぽくていいよなぁvv」

 「夜更かしの理由になるからか?」

 「そうだっ。」

幼子でも年越しの晩だけは
大威張りで夜更かししていていいというアレ。
例えて言うなら、あの感覚と似たようなもの。
そんな特別な日々となるのもまた嬉しいらしく。
悪いかよと不貞ることなくの、むんと胸張る素直さが可愛い。
日頃以上にふざけてしまうのも、
気分の高揚の為せる技というところなのだろうが、

 「ゾロは仕事があっからな。付き合って起きてなくてもいいぞ?」

次の日へ響いちゃあ困るだろ?なんて、
一丁前に言うけれど、

 “どうせ…日付を越えたら、
  あっと言う間に沈没しちまうくせにな。”

これでも昔よりは粘れるようになった方。
ちょっと前までは、十時以降ともなりゃあ
目が開いていても意識が朦朧としている態だったほどで。
何なら録画しとこうか?と気を回せば、

 『そんくらいだったら
  結果だけ朝のニュースで見た方が早い。』

リアルタイムに観てる、そのハラハラが良いんであって、
もう終わっちまってることなんなら、
よっぽどの好プレイをリプレイするっての以外では、
録画で観るのって ちょっと違うと思うから…などと。
そんな信念でもって、観戦するぞとの身構え固めておいでなところがまた。
微笑ましいやら、何とか協力して叶えてやりたいと思うやら。
精悍なお顔のその目許、
和やかな笑みでもって たわませていたご亭主だったが、

 「う〜〜〜〜っ。楽しみ〜〜〜っ♪」

その小さな身にほとばしる興奮を持て余すのか、
胸元へと拳を伏せての“くうう〜”なんて声を出したかと思えば、
幼いお顔をがばちょと上げて、

「サンジもな、
 あ、向こうは日本ほどには時差がないらしいけど、
 そいでも仕事があんのを頑張って片付けて、
 出来るだけリアルタイムで観るって。」

遠くに離れてる同士だってのに、
同時に同んなじものへ熱狂出来るっていいよなぁって、
そんなメールをもらってさ、なんて。
余計な一言付け足したもんだから。

 「ほほお…………。」
 「? どした、ゾロ?」

何か目許が怖いぞ、口元も堅いぞ?と、
いきなりの空気の冷却ぶりへ、
おおうと身をすくめた奥方だったのは言うまでもなくて。
別な意味でも、キックオフってか?
(おいおい)





   〜Fine〜  10.06.11.


  *意味不明な短編ですいません。
   でもでも、きっとルフィのようなお祭り少年は、
   こんなイベントを前に大人しくしているとは思えない。
   そんなして張り切ってた割に、
   ゾロの予想どおり、途中で熟睡しての落ちてしまうに違いなく。
   そんでもいいんですよね。
   こういうものは参加することに意義があるっ。
   (当方も、絶対に2時3時以降まで起きてはいられぬ身ですので……。
(苦笑)

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